「普連土の精神」

2022.1.25 卒業生の今
103回生(1996年卒業)
森 真由子さん

 103回生の森真由子と申します。
 私は内科医で、神経内科・リハビリテーション科を専門とし、大学病院で診療や研究をした後、現在は神経難病の方への在宅診療を行なっています。
 また2009年からは普連土学園の学校医として、生徒さんたちの健康を守る仕事も行っております。

 普連土学園在学中は、いわゆる「勉強」や「知識」として授業で学んだことはたくさんありますが、それ以外に、現在の医師としての仕事に通じる、先生や友達を通して学んだ、私の考える「普連土の精神」についてお伝えしたく思います。

 一つは、「人とのコミュニケーション」です。
 普連土では、物事を決める際、じゃんけんや早い者勝ちはありません。生徒同士話し合って決めます。例えば係りを決める時、初めは自我が出て「これやりたい!」「あれやりたい!」になりますが、友達の意見を聞き、自分の意見も述べ、「今回は別のことでもいいかな」「今回譲ってもらったから、次は私が譲ろう」と、お互い納得し、気持ちよく物事が決まります。
 こういったことは、仕事の場面でも大きく役立っています。医師の仕事は決して一人ではできません。まず、患者さんや家族の気持ちに耳を傾けること、そして看護師、薬剤師、療法士、ソーシャルワーカー、病院事務など、みんなで力を合わせて初めて良い診療ができます。

 二つ目は、「奉仕の精神」です。学校活動の中に、奉仕をすることがたびたびあります。キリスト教精神に基づき、見返りや報酬を求めず、仕事をすることです。
 医師の仕事は、時間や労力がとてもかかることもありますが、それ以上に、人の命を預かる大変重大な責任のある仕事です。「ありがとうと言われたい」「この仕事の報酬はいくらか」などど考えていては、この仕事は務まりません。目の前で困っている患者さんに、自分は何ができるか、何がベストかを考え、少しでも症状が改善するよう力を尽くすことが、神様が私に与えてくださった役割だと思っています。
 しかし、私も人間ですから、患者さんの症状が改善し、笑顔が見えると、あぁ、役に立てて良かったと安心し、また嬉しく思います。

 三つ目は、「個々を大切にする」ことです。
 学校では、成績の順位は出ません。自分がどのくらいの順位か、全く分かりませんが、通信簿で自分がどのくらい頑張れたか、自己評価はできます。人と比較することは意味がないこと、それぞれの個性を大切にすることを、先生や学校生活を通して学びました。
 こういったことは、受験勉強やその後、社会に出ても、困難にあった際に、それを乗り越えられる原動力になるのではと考えます。

 最後に、「感謝する心」です。
 聖書の言葉でも出てきますし、学校生活でも「感謝」という言葉は、よく耳にし、自然と身につきました。
 いつも、一緒に働く医師やスタッフ、患者さんやご家族に、「ありがとう(感謝)」の気持ちで接するよう心がけています。

 聖書(口語訳)に「あなたの若い日に、あなたの造り主を覚えよ(伝道者の書12章1節)」とあります。12歳~18歳という人格形成の大切な時期に、時代に流されることのない「普連土の精神」に触れられたことは、大きな恵みでした。

news2022012403 写真:90年代の学園