今を支える幸せな記憶

2022.2.7 卒業生の今
111回生(2004年卒業)
大浦 佐智子さん

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 はじめまして。111回生の大浦佐智子と申します。

 在校生および受験生の皆さんとご家族に、普連土学園で過ごした日々が私の人生にどのような影響を与えたか、そして今も与え続けているかを僅かながらでもお伝えできたらと思います。

 私は普連土学園を卒業後、慶應義塾大学で政治学(ゼミは社会学)を学び、重工業メーカーに入社。総務部で株主総会運営や取締役会事務局業務、広報・IR部で新聞広告、テレビCM制作など広告宣伝とコーポレートブランディング業務に携わりました。入社11年目に普連土学園に在学していた頃から念願だった海外留学を実現しようと思い、退職してスコットランドの大学院へ入学。帰国後はPR会社に勤務しています。

 6年間で特に私の印象に残っているもの、普連土学園に感謝していることは大きく3つあります。

1.恵まれた英語学習環境
 ネイティブの先生が3人常駐するなど、普連土学園は英語学習の場として非常に恵まれていました。日本人の先生がABCから基礎文法を丁寧に教えてくださると同時に、Englishという授業ではネイティブの先生が劇やゲームを交えながら、自然な言い回しや正しい発音を遊び感覚で教えてくださいました。授業以外にもEnglish Lunch(全学年が任意で参加できるネイティブの先生と英会話を楽しみながらのランチ)、タスマニアのホバートにある姉妹校との交流など、日本にいながらにして生の英語に触れる機会が数多くありました。また、自分でテーマを決めて書いた英作文を先生は毎回丁寧に添削してくださり、自分が期待する以上のサポートを常にしていただきました。

 普連土学園の英語教育は日本で受けられる最高峰の教育だったと、今改めて思います。そして、先生方が1つ1つの授業を準備する手間と労力がどれだけかかっていたかと思うと頭が下がります。
 おかげで英語の発音はネイティブからも褒めてもらえることが多く、大学院の英語に関する入学資格要件をクリアできたのは普連土学園で基礎をきっちり身につけたからだと思います。

2.主体性、自律性を育む仕組み
 委員会活動も思い出深い活動の1つです。生徒会を始め、選挙管理委員会、図書委員会、宗教委員会など複数の委員会が存在し、必ず1つの委員会に属して学校運営に関わる仕組みは、どうやって自分たちの学校生活をより充実したものにしていくかを自ら考え、実行する機会になっていたと思います。また、年に数回ある大掃除、毎日の掃除は教室だけでなくトイレ掃除まで自分たちでやっていたことが、当時はありがたくなかったのですが、今になってその価値が見えてきました。自分たちが使うものは自分たちで整える、それ以前に共同で使うものは大事に扱う、基本的なことですが知らず知らずのうちに身につける機会になっていたと思います。

 今でも窓ガラスを磨く際、雑巾で拭いてから新聞紙で地道にこするという普連土式を私が継続しているのも、身に着いた習慣の強さを感じる瞬間です。

 自分の置かれた状況を自分ゴト化して考える。時々目をそむけてしまうこともありますが、「他人事にする言動は恥ずかしいこと」という意識を持っていられるのは、普連土学園の日々の生活によるものだと思います。

3.礼拝での道標となる言葉との出会い
 毎朝の礼拝は先生方、同級生、先輩後輩の話に耳を傾ける貴重な時間でした。中でも忘れられないのは、畠中ルイザ校長(当時)がおっしゃった「You are lucky ones.」という言葉です。先生はこれを話の最後、締めくくりの言葉として使われました。「恵まれた環境に生まれたあなた達は、その恵まれた状況と自分の持てる力を、人のためにどう使いますか」という問いかけだったと解釈しています。

 普連土学園は奉仕活動に携わる機会が多くあります。雑巾を手縫いして障碍者施設に寄付したこと、収穫感謝の時期にはリンゴとミカンを持ち寄って病院に届けたことなど、今でも教室に満ち溢れる果実の香りと一緒に思い出すことがあります。

 正直、卒業から20年近くたってもこの問いに対する私の答えは出ていませんし、行動に移せていると100%自信を持って言うこともできません。しかし、「自分がやることは誰かのためになるだろうか」ということは、折に触れて考えるように意識しています。世界を変えるほどのことはできなくても、周囲の人に小さなことでも還元できる人生を歩みたいと思っています。

 6年間を振り返ると思いがこみ上げてきて、書ききれないことが数多くあります。
思いがこみ上げてくる、心が温かくなる思い出が沢山ある、それだけ幸せな6年間だったと思います。そして幸せな記憶が今を生きる力になっています。

 大学院留学時代、とても嬉しいことがありました。
 休暇中にパリ航空ショーを訪れ、前年にロケット甲子園で優勝し、国際大会出場権を得ていた理科部ロケット班チームMERN(メルン)メンバーと恩師に再会できたことです。女子だけのチームで参加しているのはMERNだけで、海外の高校生と並んで立つ後輩たちがとても誇らしかったです。

 これだけ多くの人の善意に囲まれ、全力でサポートしてもらえる期間は人生において多くありません。12歳~18歳を普連土学園で過ごす皆さんの人生が、私と同じように、幸せな記憶が苦しい時も一歩ずつでも前に進む力になることを一卒業生として願っています。